「思い出した?」
少しためらったけど、うなずくことしか出来なかった。

「あの日…初めてお前が春哉と仲良くなった日、お前を誘って、春哉と三人で野球の試合見てたんだよな。 その時に春哉を誘うんじゃなかったよ。」

優也は少し口の端を上げて言った。

その時あたしは何ともいえない複雑な気持ちを抱いていた。
それでも優也は、ゆっくりと話していく。
「お前は、春哉と今までずっと同じクラスで…運命かもしれないって喜んでたけど…知ってる? 俺とお前も…逢った時からずっと、同じクラスなんだよ?」
『…。』

正直、今の優也の言葉で初めて気付いた…。あたし…春哉の事しか考えていなくて…優也の事っ…考えてなくて…。
「初めて気付いた? お前は春哉の事しか眼中にないからな。」
『…。』


違う。それは違うよ、優也。
今まではそうだったかもしれないけど、今は…優也に揺れてるんだよ?

何か…言わないといけないって思った。
でも、言葉が出てこなかった。


キーンコーンカーンコーン───…

いつもより悲しく聞こえるチャイムに、教室に戻ることしか出来なかったあたしを…許してね、優也。



歩くあたしを呼び止めた優也は言った。“さっきの告白だけど…返事は言わなくてもいいよ。 分かってるし。”と───…

あたしは『うん…。』と、冷たいことを言ってしまった。