「それは…俺は知らないって言った。」
『そっか…。春哉、まだ結那と付き合ってるんだよね?』
「…うん。でもっ…あいつ…。」
優也が真剣な眼差しであたしに訴えようとしたけれど、一瞬にしてその表情は変わって、下を向いた自信の無い顔になった。
『何…?』
「いや…その話はいいや。俺、お前に言いたい事がたるんだ。」
また、真剣になった。
すると、優也は少し黙った。
あたし…春哉が好きだけど、春哉は全然あたしの事なんて何とも思っていない。小学生の時から、ずっと春哉だけを想ってきた。
春哉のためになる事なら、なんでもしてきた。
夏休みの宿題だって、今までずっと見せてあげていたし、野球の練習をするのに、夜は1人じゃ怖いっていうから、夜中に公園での練習に付き合ってあげたりもした。だって、春哉と少しでも一緒にいたかったし、春哉の役に立ちたかった。
なのに、春哉は自分勝手で…。自己中で…。あたしの気持ちなんて考えた事ないだろうね。
あたしが頑張っていたのにも気付かずに、礼奈ちゃんと付き合ったり、結那と付き合ったり───…
何度も憎くなったりした。けど、もう嫌いになりたいだなんて思っていても…嫌いになれなかった。
目が合う度、話す度、近付く度に好きになっていった。