バタンッ───…
『ふぅー… よし。』
大きく息を吸って深呼吸をする。まだ、どうするか、何をすればいいかは分からないけど…。とりあえず、授業があるからトイレからは出ておこう。
鏡を見たら、少し目が赤かったけど、気付かれない程度で安心。

トイレを出ると、優也が歩いていた。あたしと目が合うと、手をヒラヒラしてあたしを呼んだ。

そして、階段の隣の扉の所で立ち止まった。
『どうしたの?』
「春哉、お前の気持ちに気付いてる。」

『……ぇ…。』
…やっぱり。でも、昨日のあの言葉だけで分かっちゃったの?それで正解だけど…ちょっと自意識過剰じゃない?
『あははっ…』
あたしはその重い空気を断ち切るように低い声で笑った。
優也は不思議そうにあたしを見ている。
そして、聞いてみた。
『何で春哉は、あたしが春哉の事好きって分かったの?』

すると、優也は言いにくそうに斜め下の方を見て、しばらくしてから口を開いた。
「なんか、さっき…お前泣いてたろ? それ、春哉が見てたらしい。 んで、俺に“もしかして、優って俺の事好きだったりする?”って…。」

嘘…。さっき泣いてたの見られてたんだ。最悪。
『それで、優也何て答えたの…?』
真っ直ぐ優也の方を向いて言った。
まさか、はい、そうですよって認めたなんて言ったら怒るからね。


…でも、もう知られてもいいかな。この時のあたしは、もうどうでもよくなっていた。