「おはよう、ごめんね。準備させちゃって……」

エルサが微笑むと、ルイーザは心配そうな顔をしながらマグカップをテーブルの上に置いた。エルサはコーヒーにすぐ口をつける。

「あんた、昨日の夜中もうなされていたよ。大丈夫なの?」

また菊の夢?とルイーザは訊ねる。エルサは嘘をつくことはないだろうと正直に頷いた。

今、ルイーザはフィンランドに旅行に来ている。エルサは案内しているのだが、心にはどこか穴が空いていた。地震が起きていなければ、今ここに菊がいるはずだったのだ。

「エルサ、受け止めるのは簡単じゃないだろうけど少しずつ前を向いて。じゃなきゃ、菊だって天国に行けない」

「……うん、わかってる。先にご飯食べてて」

痛む胸を押さえ、エルサはリビングを飛び出す。親友の死を受け止められるルイーザのことを、エルサはすごいと思った。泣きながら部屋へと戻り、引き出しを開ける。

引き出しの中には、大量の手紙が入っていた。エルサは何も書かれていない紙を取り出し、ペンを走らせる。