「もう逃がしませんから」
1歩近寄れば、触れ合ってしまいそう。
私たち以外誰もいない シンと静まり返った放課後の部室で声が響く。
「…っ…」
「俺は待ったよ。十分。」
あなたの真っ直ぐな目が、私を捉えて
離さない。
「遙人、近いっ…」
私の顔横につく肘によって逃げ場を奪われた
私はこの場から逃げれずにいた。
「一椛先輩が逃げるからですよ。」
「だって、私のこと…好き…とか言われても!遙人の周りならもっとかわいい同い年の女子いるでしょ?私なんか別に可愛くもない同じ部活の先輩じゃん」
「俺には一椛先輩が一番可愛く見えんの。こんなに言ってるのに、俺の気持ち分かってくれないんですか。」
遙人がさらに距離を詰める。
刺があるようで甘すぎる言葉からも、触れてしまいそうな近すぎる距離からも、つい逃げたくなって顔を背けた。それでも自分の顔がどんどん赤く、熱くなっていくのがわかった。