「……おまえまで……」
「……分かるだろ、音弥。俺はこいつらFlower Pinkに散々やられたんだ。従うしかねえ」
……春橋の人がそう言ってくれるなんて。
春橋と戦ったあの日みんながあんなに返り血を浴びて戦ってくれたおかげだ……
……全部、今に繋がってる。
「……あー……もうこれじゃあ反対派的なの俺1人!? 分かったよ! 全員を敵に回すほどバカじゃねえしな!!」
音弥さんはそう言ってドカッとテーブルに足をあげた。
それは……従うってことかな?
……めっちゃ態度悪いけど。
「……みなさん、本当にありがとうございます。みなさんがついてきてくれる以上、本気で引っ張りますのでよろしくお願いします」
私が椅子から立ち上がりそう言うとみんなはパチパチと拍手をしてくれた。
その様子にジワッとまた泣きそうになる。
そんな私の肩を一犀さんはポンッと叩いた。
「……よくやりました。従わせましたね、全国のチームを。そして話し合いでなんて……前代未聞です」
「……一犀さん……」
「……これはみなさんが、Flower Pinkとして今まで戦ってきてくれた勲章です……」
私がそう言うとFlower Pinkのみんなは私を囲ってたくさん褒めてくれた。
「……立派なQueenですよ、海桜さん」
「……ありがとうございます」
そして過去最大に私を認めてくれた顔をするみんなの表情が嬉しくてたまらなかった。
……桜雅さん……もういつ目が覚めても大丈夫ですよ。
Flower Pinkは全チームの信頼を得ることが出来た。
橘組を潰し、全チームのトップに立ったこの景色を桜雅さんと見たい。
____……さらに1ヶ月後。
港斗くんから連絡を受けてバタバタと私は病室に駆け込む。
ガラッとドアを開けるとそこには目を覚ました皐月がいた。
「……海桜……」
「……皐月……」
……皐月……目を覚ました……!
「……よかった……!」
私は皐月に駆けつけてギュッと皐月を抱きしめた。
「いっ……。ちょっと海桜! 急に抱きつくなよ!恥ずかしい!てか痛い!」
その反応も皐月だ……
私は信じられなくてポロポロと泣いた。
「……泣くとか大袈裟だなー……だいたい桜雅くんはまだ起きてないでしょ。兄が起きたくらいで泣くのは早いんじゃない?」
「……でもずっと起きるのを待ってたんだよ……! ずっと話したかったし……それに桜雅さんだってすぐ起きる」
私が泣きながらそう言うと皐月はギュッと私を抱きしめ返してくれた。
……皐月……
「……港斗から全部聞いた。僕が眠っていた間のことー……海桜が全部従わせたんだってな」
……港斗くん、全部話してくれたんだ。
「……ううん。みんなが支えてくれたからこんな無茶なことができた。港斗くんも皐月のために動いてくれたんだよ……」
私がそう言うと港斗くんは少し照れたような顔をした。
「そうだよ、皐月! おまえ起きるの1ヶ月おせえんだよ!」
「……悪いな、いつもパしらせちゃって」
冗談っぽく皐月がそう言うと港斗くんは安心したようにハハッと笑った。
「……大丈夫、もう慣れてるよ」
本当に兄弟のように育ったんだな、2人。
やりとりを見てると微笑ましくなる。
「……あとさ、海桜」
「ん?」
そして皐月は少し申し訳なさそうな顔をして私を見た。
……なに……?その顔……
「……さっき叔父さんも来たんだ、海桜がくるちょっと前」
「え!?」
藍が!?
……なんで連絡してこないのよ、藍……!
一緒に話すって言ってくれたのに……!
「……あ、藍になんて言われたの……?」
「家族にならないかって言われたよ」
「……家族……」
それは……私と同じで香月家の養子になるってこと……?
「……うん、香月皐月として暮らさないかって言われた。迎えに来るのが遅くなってごめんって。あの父親から守ってやれなくてごめんって謝られた」
「……皐月は……なんて答えたの……?」
私がそう聞くと皐月はまた切ない顔をした。
「ならないって言った」
「……なんで……?」
私と家族になるのが嫌とか……?
やっぱり私のことを許せないとか……?
そんな顔で皐月を見ると皐月はまた私をギュッと抱きしめた。
「……海桜が色んな人を失ったこと、そのために苦しんだこと、詳しく叔父さんに聞いたよ。それに海桜とまた暮らせるって思うとすごく嬉しい」
「……じゃあなんで……」
……一緒に暮らそうよ、皐月。
私に濃い血が繋がってる家族は皐月しかいないんだよ……