「咲?どうかした?」

「ううん。颯と葵、仲良くなったなーと思って」

「ふふっ、そうだね。最初の険悪ムードが嘘みたいだ。」


信乃はくすくす笑いながら私にヘルメットを被せ、バイクに乗せてくれた。向こうで颯も葵に同じようにしてあげてる。

あ、葵の顔、ちょっと照れてて可愛い。


「じゃ、行くぞ」


永和くんの合図で一斉に走り出す。今日は町はずれの山道ルートをゆっくり走る。幸い車通りもあまりなく、少しは声を大きくすれば話しながら並走できるくらい静けさだ。

だからこそ気づいた。

一台のバイクが私たちを抜かしていったとき、葵が小さく声を漏らしたのを。