「すっすげぇ!!白石!!」
「おいおい嘘だろ・・俺ら何時間もかかっても一度も止められなかったのによぉ・・」
男バス部員は納得いかないと言わんばかりにひきつってると、

「白石…またうまくなってる……」
キタローはジッとその瞬発力に感心しながらiPadの撮影を回す。


「へへっへー!とりぃ!!」
ボールを奪った未茉は勝ち誇ったように次こそは決めると早いドリブルでリングに向かうと、ムッとした翔真に簡単にブロックされ、

「もー!!」とシュート打たせてもらえない苛々から、激しく体を寄せると
「わっ!!」
力の加減を一瞬忘れた翔真が「やべ」と崩れそうになる未茉を背中で受け止め、

「わゎっ!!」

後ろへと重心をかけてた足がグラグラとバランスを崩して、未茉の体は床に崩れ落ちると、

コロコロ……
二人の横を転がるボール。

守るように両手後ろにつく未茉の背中に手を回し覆い被さるように翔真の体があってーー

二人の顔は後、数センチでくっつきそうなくらい二人の唇も近くにあった。



「平気か?翔真」
彼にすっぽり覆われて影になる未茉が長いまばたきをしながら聞くも、

はぁはぁ……と息の上がった互いの吐息が混ざり合う程の近い唇の距離と重なる視線に翔真は、

「ちょっとヤバイ…」
「ウソ、どっかやった?」
「心臓が。」
「は?」

まるで意識してない彼女をよそに体は無意識に本能のままに背中に回した手で未茉の体を抱き寄せていた。


「明日は勝つから待ってて。」


「うん?うん。」

翔真のいつも優しく支えてくれる手と、いつも抱き合う体の厚さと重みは、汗でベタベタするユニフォームが擦れあっても不快などなく、いつもの体温も鼓動も、妙に落ち着き気づくと未茉の手も彼の背中に手を回していた。