最初に地上に降りたのは、あやめが大学1年生のとき。

もうすぐ夏がはじまろうとしていた。


指令としては高校3年生のときの鴻上あやめに会うことだったので、このとき僕は気配を消していた。

それにもともと人間ではないから、誰にも見えない、いわゆる透明人間みたいな感じ。



鴻上あやめを見つけるのは簡単だった。

まあ、顔は知ってるし、能力でその人がいるところに飛ぶことができるんだけれど。

なんだか常に寂しそうな顔をした彼女は、まるで生きている感じがしなかった。

まだ高坂雫が亡くなってから1年もたっていないし、今でもきっと高坂雫のことが忘れられないのだろう。


でも僕がかわりになることで、この現実はかわる。

きっと楽しい毎日を送ることになるだろう。