スプーンを手に取って目の前のオムライスを眺める。
きのこをふんだんに使ったオムライスで、
ふわふわしているのが見て分かった。


左端からすくって口に運ぶ。
口の中でとろりと溶けたかと思うと、バジルが効いて広がる。
口で言えばウソっぽく聞こえてしまうかもしれないけれど、本当に美味しかった。


「美味しいですね。神崎さんの言う通り、
 このオムライスにしてよかったです」


「良かった。ここのオムライスにはハズレはないから、
 安心して食べられるんだ。
 しょっちゅう期間限定でスペシャルメニューを提供しているから、
 通うのにはおすすめだよ」


このお店なら駅からも近いし場所は覚えた。
来ようと思えばいつでも来られるかもしれない。
通う価値のあるお店だと思った。


「神崎さんの行きつけのお店なんですよね?」


「ん。そうだよ。俺はオムライスが一番好きだからね。
 よく来るんだ」


「あの、美奈さん……
 あの店員さんとは仲がいいんですか?」


私の問いに、神崎さんはスプーンでオムライスを口に運ぶ動作の途中で止まると、
目を丸くする。
そしてゆるゆると口角を上げて笑い始めた。