神崎さんがにっこりと笑う。
これでよかったのかな。


なんだかこのセリフはとても大胆なように思えるけれど、
間違っていないかな。


繋がれた手に視線をやる。
彼の長い指が、私の短い指に絡んでいる。


少しでも爪の手入れをしてくればよかったと後悔しても遅い。
普段からガサツな私の爪はガタガタだった。


彼の指を傷付けてしまわないか心配だったけれど、
彼は気にする様子もなく、私の手に絡めている。


もう緊張で心臓が飛び出しそうだった。


「勿論、そのつもりだよ。
 一ノ瀬さんには俺だけを好きになってもらうからね。
 でも俺に出来るのは手を差し伸べてやることだけ。
 あとは君がその手を取ってくれるかどうかだから」


「は、はい」


空いたもう片方の手で私の頭を撫でた神崎さん。
びっくりして一瞬肩をすくめたけれど、彼の優しい笑みを見て、
体の力を抜いた。


頭、ベタついてないかな。
こうなることが分かっていたのなら、
前日は念入りにトリートメントをしたのに、と思う。


さっきから私は彼に翻弄されっぱなしだ。


「あの~。オムライス出来上がったんですけど~」


気付くと美奈さんが料理を持って立っていた。


いけない、離れなくちゃと思ったけれど、
神崎さんは手を離してはくれなかった。


美奈さんは私たちの繋がれた手を見てニヤニヤ笑う。


「仲いいですね~。でも、料理は冷めないうちに
 食べてあげてくださいね」


そう言ってテーブルにオムライスを置いてくれた。


私は恥ずかしくて少しもじもじしていた。
彼の方はというと、あっけらかんとしていて
美奈さんを追い払った。


「さあ、食べようか」


「は、はい」