本当に5分くらいのところに、レンガ造りのお店があった。
「モリノ」と書いてある。


神崎さんは「ここだよ」と言って扉を開けてくれた。


中に入るように促され、一歩中に入ると、
ジャジーな音楽が流れていた。
雰囲気が素敵なお店だということが瞬時に分かる。



レジの前にはサンタの置物が置かれていて、
手書きの丸文字で本日のおすすめメニューが書かれている
看板をぶら下げていた。


4人掛けのテーブルがいくつか並んであり、
お店の中にはちらほらとお客さんがいた。


厨房は外からじゃよく見えなくて、
その代わりに料理を作る音が心地よく聞こえていた。


「いらっしゃいませ……あら?仁くん?」


若い女の人がエプロン姿で出てきた。
肩くらいまである茶髪の髪を後ろで一つに束ねている。
少し猫目の店員さんは神崎さんを見てニヤニヤと笑った。


「えっ?もしかして……彼女さん?」


「そうだよ」


「やっぱり~!もしかしてそうかなって思った!
 だってまんま仁くんのタイプの子だもの」


「そういうのいいから、席空いてる?」


「はいはい、デートにぴったりの席が空いてますよ。
 どうぞこちらへ~」


店員さんに案内されて、私たちは中庭の見える席まで来た。


ガラス越しに大きなクリスマスツリーが見えて、
綺麗にライトアップされている。


座れば確実に絵になると思う。
そんな素敵な席に、神崎さんは私を座らせてくれた。


「さて、どれにする?」


「ええと……」


メニューを差し出されて食い入るように見つめる。
沢山の種類のオムライスの写真が並んであって、どれにしようか迷う。
でも早く決めないと、一人で来ているわけではないし、待たせるのも悪い。
ここは迷ってないでぱっと目についたものを選ぶしかない。


「俺のおすすめはね、3種のチーズオムライスと、
 きのことバジルのオムライスなんだ。よかったら参考にどうぞ」


「あっ……じゃあ、きのことバジルのオムライスにします」


「OK。美奈ちゃん、注文」