【お疲れ様です。一ノ瀬です。
 葛城さんとお仕事をすることになりました。
 一応ご報告です】


携帯を握りしめて目を閉じると、ブーっとすぐに鳴った。
バッと弾かれたように携帯を見ると、「神崎仁」と表示されていた。


【それは危険だね。仕事だから仕方ないけど、
 あまり接近しないようにね】


返信がとても早い。
まるで私からの連絡を待っていたみたい。


【気を付けます】と返事を書こうとしていると、
また携帯が鳴った。


【今日、仕事が終わったら食事でも行こうか。迎えに行くよ】


これは、デートと言うやつなの?
急に決まったデートのお誘いに、頬が無意識に緩む。


さっきまでの不安は影を潜め、
完全に気分は晴れやかだった。


午後の仕事を終えれば初デートだ。
ご褒美だと思って乗り切ろう。



神崎さんに【分かりました】と返事を書いて送信し、
携帯をしまった。


「奏音。仕事行くわよ」


「うん、今行く」


立ち上がって顔を上げると、葛城さんと目が合った。
瞬間はドキッとしたけれど、そんなに焦りや不安はなかった。
それは多分、神崎さんのメールのおかげかもしれない。