自分のデスクに戻って携帯を開く。
アドレス帳に彼の名前が表示されていた。
「仁って言うんだ……」
そこにある「神崎仁」という名前をじっくりと見つめる。
本当に、私、この人とお付き合いするんだ……。
「何見てるの?」
どのくらいそうしていたのか、気付くと七海が隣にいて、
携帯を覗き込んでいた。
慌てて携帯を伏せると、目をパチパチさせていた。
「何?好きな人でも出来た?ニヤニヤしてたよ?」
「し、してないよ!」
「そう?それより聞いて。
私たち、午後は裕也と仕事よ。ラッキー」
「えっ?葛城さんと?それって、私も?」
「そうよ。一緒に頑張りましょう」
「う、うん」
不安になって携帯を握りしめた。
葛城さんとどんな顔して会えばいいのか分からない。
いっそ全てを告白して逃げ出したい。
でも、そんな勇気もない。
どうしようかと頭を悩ませていると、
ふと携帯が気になった。
携帯を起動させてアドレス帳を見る。
「神崎仁」と登録された欄を選択して、メールの作成ボタンを押した。
先月スマホに変えてからまだフリック操作に慣れていないので、
不慣れな手つきで文字を打つ。
読み返して送信ボタンを押した。