「俺の番号とアドレス、入れておいたから。
君のも登録したいから、連絡をくれる?」
「えっ?私が、ですか?」
「そう。俺は今、携帯持ってないんだよね。
だから君から、連絡くれる?」
「わ、わかりました……」
連絡って、どうすればいいんだろう。
メール?電話?どっちも緊張する。
これからよろしくお願いします、みたいな?
まさか私から連絡を入れないといけないという試練が待っているなんて
想像もしていなかっただけに、戸惑ってしまう。
「じゃあ、ほら、もう行って。ご飯はしっかり食べなきゃね」
「でも、あの……」
「ん?」
これで終わり?
こんなの久しぶり過ぎて分からない。
こんなにあっさりしているもの?
葛城さんの時は、もっとこう、触れあったり、
長い時間一緒にいたり、とにかくラブラブって感じだったのに、
連絡先を追加して終わり?
もう少し、お話するものだと思っていた。
「いえ、なんでもない、です」
「じゃあまたね」
「は、はい……」
戸惑いつつも扉に手をかけて、休憩室を出た。
バタンと扉を閉めてエレベーターに乗る。
5階に着くまで、ずっと携帯を握りしめていた。
この携帯で連絡をしないと何も始まらない。
彼はあんなことを言っていたけれど、
私自身が動かないと何にもならない。
自分から彼を求めるようで、恥ずかしかった。