「じゃあ君が悪い女だったんだね。
 浮気は良くないと思うな、俺は」


「す、すみません……」


「何に謝っているの?」


「その、私が嫌な女だから……」


「俺がそう思っていると思っているの?」


「は、い」


答えると、神崎さんはふふっと笑った。


「そんなことないよ。君は俺の探し物を手伝ってくれたし、
 挨拶もきちんと出来るし、いい子だと思っているよ」


「そんな、いい子だなんて……」


「俺はね、人を見る目だけはいいんだ。
 君はいい子だ。断言するよ」


そんなことを言われると照れちゃう。
それにしても私が不倫をするような女だとは見抜けないのかしら。


彼の言う、人を見る目は信用できるの?
私はそんなに、いい子じゃないのに。


「で?泣いたってことはまだ未練があるってこと?」


「……はい。彼のことがまだ、好き、です」


「ふうん。それは、いけないなぁ」


だよね。
葛城さんには七海という奥さんがいる。
ただの浮気じゃないんだ。


一生を添い遂げる誓いを立てた二人の間に割って入ったのは私。
本来ならすぐにでも忘れて、なかったことにしてしまうのが一番いい選択なのに。
でも私は、その恋を終わらせる術を知らない。


葛城さんは私にとって初恋の人でもある。
私はもう、一生恋が出来ないんじゃないかと思うくらい、
溺れきっているんだもの。


どうすればいいんだろう。


「一つだけ、君を救える方法がある」


「えっ?……それは、何ですか?」


ぱっと顔を上げた。


私がどれだけ考えても見つからなかった逃げ道を、
この人は知っているというの?


縋る思いで彼を見ると、
神崎さんは涼しい顔をして言った。








「俺と付き合えばいい」








「……はっ?」