「付き合っている彼がいたんですけど、
 昨日急に別れを切り出されて……
 それで、悲しくて泣いてしまいました」


「へぇ、どうして別れたの?」


「わ、私のことは遊びだったんだと思います」


「それは、悪い男に引っかかったね」


「いえ」


「ん?」


思わず否定してしまった自分にしまったと思う。
嘘は吐けない性分なんだろうか。


「私も、悪いんです。そんなに
 綺麗な関係じゃありませんでしたから」


「じゃあ、浮気、だ」


「は、い。そうです」


どうしてこんなことを話しているんだろう。
嫌な女だと思われないだろうか。


浮気をしていたダメ女だと思われているんだろうな。
その証拠に、私を見る目が痛い。


居た堪れなくなって俯くと、神崎さんの手が見えた。
ゴツゴツしていて、微かに血管が浮き出ている。
ほどよく色がついていて男の人って感じの手。


その手を見つめていると、手が視界から消えた。
手を追っていくと、神崎さんは顎を触っていた。