恋愛バラエティの続きは、今でも気になる。病院勤務のみーこと、IT企業勤務のマサの恋の行方は、いったいどうなったのだろう? 

 だが、この世界には、恋愛観察バラエティなど存在しない。それどころか、テレビすらない。確かめるすべは皆無なのだ。

 みーことマサの恋の行方は、アンジェリ―ナの中で永久にお蔵入りとなってしまった。

「のおぉぉぉ!」

 悔しさのあまり思わず叫べば、もやしの種の水洗いをしていたトーマスが、びくっと肩を揺らす。ララに至っては、「掃除してきまーす」と逃げるように食堂を出て行ってしまった。

「……どうかされましただか?」

 トーマスが、アンジェリ―ナの機嫌を窺うように声をかけてくる。

「うん。みーことマサがちょっとね」

「……?」

 いよいよもって、コイツやばいだ、という目でトーマスが見てきた。

「そ、そういえばアンジェリ―ナ様。先日は、弟のダニーがお世話になったようで、ありがとうございます」

「ダニー? 誰かしら?」

「もやしの作り方を教えてもらったと言っていました。おかげさまで、この辺りでは今もやしが大ブームですよ」

「もやし? もしかして、バーベキュー師匠のこと?」

「ばーべきゅーししょー?」

 なるほど。バーベキュー師匠は、兄のトーマスに用があって塔の周りをうろついていたのか。

「でも弟って、あの子、七、八歳ってところでしょ? いったい何歳離れてるのよ」

「ああ見えても、ダニーは十歳なんです。だからあっしとは、ちょうど十歳はなれてますだ」

「ふうん、十歳。……って、十歳差!?」

 アンジェリ―ナが頓狂な声を上げれば、それがどうしたべ、という目でトーマスが見てきた。

「トーマスって、二十歳なの!?」

「はい。よく三十くらいに見られますけどね」

 てへへ、とトーマスが笑う。

「いやいやいやっ! それって気を遣われてるから! あなた、五十代に見えるから!」

「アンジェリ―ナ様、ひどいです」

 その見かけからおじさんだとばかり思っていたが、まさかアンジェリ―ナと二歳しか違わなかいなど想定外だ。

「つまり、ララとは同い年ということなのね」

 童顔のララと老け顔のトーマスが並べば、おじいちゃんと孫ほどにも見える。

 すると、トーマスがなぜか顔を赤くした。

「ララさんって、二十歳だったんですね。もっと若いのかと思っていましただ」

「……ん?」