アンジェリーナの気持ちはよそに、結婚式はいつがいいかなど、王はかなり先走ったことをビクターに尋ねている。

(絶対王政って恐ろしいわ)

 例えばアンジェリーナが前世に住んでいた日本では、こんなことはまずあり得ない。どうやって回避したらいいの、と絶望的な気持ちになっていると。

「アンジェリーナ様」

 ふと、すぐ近くでビクターの声がした。

 見れば、ベッドに座り込んだままのアンジェリーナの前に、いつの間にかビクターが膝をついている。

 真っすぐにこちらを見上げる碧眼にそろりと視線を向ければ、ビクターが静かに口を開いた。

「あなたの答えを聞いていませんでした。以前は断られましたが、改めてお聞きします」

 ビクターの顔に、今更のようにみるみる熱が集まっていく。

 それを不覚にも、アンジェリーナはかわいいと思ってしまった。と同時に、王命が絶対のこの世界で、アンジェリーナの気持ちを慮ってくれる彼の優しさにも心打たれる。

「俺の妻に……なってくれませんか?」