ビクターの返答に、アンジェリーナの顔に一気に熱が集まった。

 真っすぐすぎるほどの真っすぐな彼の言葉が、彼女の胸をひたすらざわつかせる。ツンデレキャラは、一体どこに立ち消えてしまったのだろう。これでは、ただの熱血男ではないか。

 王はしばしの間押し黙る。だが間もなくして、朽ちた礼拝堂を揺るがすような豪快な笑い声を響かせた。

「ハハハッ! 熱い男だな! いいだろう、王位を継ぐと誓うなら、アンジェリーナをお前の妻にしてやろう。私も、心からそれを望んでおる」

「本当ですか?」

 ビクターが、いつになく明るい声を出す。彼はすぐに頭を垂れると、一言一句をはっきり言い切った。

「でしたら、いずれはこの国を、アンジェリーナ様とともに末長く統治することを誓います」

「そうかそうか」

 うんうん、と幸せそうに頷く王に、よりいっそう深々と頭を下げるビクター。

(ちょっと待って! どうして勝手に話が進んでいるの!? 私の意見は無視っ!?)

 王族が絶対的な権力を持つこの国では、王命には逆らえない。よって、たった今、アンジェリーナがビクターの婚約者になることが決まってしまった。