そうっと引き出しを開け、錆びかけた銅製の鍵を取り出す。そしてアンジェリ―ナを起こさないように最善の注意を払いながら部屋を出る。

 部屋の外では、ランプを手にしたビクターが待ち構えていた。

「うまくいきましたよ。さあ、さっそく五階に向かいましょう」

 ヒソヒソ声で、ララはビクターに見せびらかすように鍵を掲げる。

 罪悪感が捨てきれていない様子のビクターは、気まずそうにしながらも頷くと、先に立ってランプをかざしながら階段を上り始めた。

 五階の問題の部屋の前に辿り着くと、ララはドアノブの上部にある鍵穴に、迷いなく鍵を差し入れた。ゆっくりと捻れば、やがてカチッという小気味のよい音が闇に響き、微かにドアが開いた。

「怖いんで、先に入ってください」

 ララは素早くビクターの背後に回り込んだ。

「俺から、ですか」

 ビクターが浮かない顔をする。

「やっぱり俺は、アンジェリ―ナ様を裏切るような行為は――」

(往生際が悪い!)

 渋っているビクターにいら立ちを覚えたララは、足でドアを蹴り開けると、力の限りビクターの背中を押す。