「そうですか? スチュアート様はあれほどの美男ですし、何よりもこの国の次期後継者でいらっしゃる。アンジェリ―ナ様がいまだ心を奪われていてもおかしくないと、俺はいつも悩んでいるのです」

 ここまで言っても、ビクターはまだ信じ切っていないようだった。アンジェリ―ナが好きすぎるあまり、嫉妬が止まらないのだろう。

「……あっし、実は聞いたことがありますだ」

 ふと、髭面を青ざめさせながらトーマスが言った。

「あの部屋から響く、『まあ、素敵』とかなんとかいう、うっとりするようなアンジェリ―ナ様の声を」

「やはり、スチュアート様の姿絵に懸想していらっしゃるのか……」

 ビクターがガッと頭を抱えたのを見て、ララは慌てた。恋は盲目とはよく聞くが、実際に目の当たりにするとかなりめんどくさい。

「いや、それは絶対ないですから!」

「では、何に対してうっとりされていたのでしょう? それ以外考えられないではないですか」

「それは……」

(分からないからこうして協力を仰ごうとしているんじゃない!)

 ララは意を決すると、テーブルに身を乗り出した。こうなれば、単刀直入に申し出る方が手っ取り早い。