知らなかった。
姉さんが
こんな風に思っていてくれていたなんて。
小学生の頃は
姉さんとも仲良しだったけど。
中学に入って
俺は姉さんのことも無視していたから
姉さんにも嫌われているって思っていた。
その時
穏やかな父さんの声が耳に届いた。
「十環くんがこの家を出たいと
本気で思っているなら止めない。
親として援助できることはする。
でも……
少しでもこの家に
いたいと思ってくれるなら……
私たちと暮らしてほしい」
「私も……
十環くんの母親でいさせてほしい」
父さんと母さんの声が
俺に耳に届いた時には
俺の意志ではもう止められないくらい
涙が頬を伝い続けていた。
父さんと母さん、そして姉さんが、
俺を家族と認めてくれていたなんて。
震えが止まらないくらい
嬉しさが込み上げてくる。
「で、十環はどうしたいわけ?」
姉さんの言葉を聞いて
無意識に俺の思いを答えていた。
「俺……
この家に……
いたい」