『俺の部屋に遊びに来て』
俺から一颯にお願いしたのに
もう無理っぽい。
それに
明虹学園に通うって
一颯に言っちゃったけど。
高校には通えそうにない。
俺はこの家を出て
なんとか一人で生きていかなくては。
そのためには
高校なんて行かずに働かないと
生きていけないから。
俺は自分の部屋に入ると
大き目なボストンバックに
荷物を詰め込んだ。
紙袋の中にも
ギューギュー詰め込んだ。
袋に荷物を詰め込みながら
押し寄せてくるこの家での思い出。
小学生の頃は
俺にカメラの撮り方を教えてくれた
優しいお父さん。
学校から帰ると
いつも玄関まで笑顔で駆けてきて
手作りのお菓子をくれたお母さん。
中学で俺が
二人を無視し続けても
それでも必死に笑顔を作って
俺に接してくれていた。
二人を恨んでいた時には
全く見えなかったけど。
今は育ててくれた父さんと母さんに
感謝したいことが溢れてくる
それに気づいた時には
涙がぽたぽたと床を濡らしていた。
提げられるだけのバックを両手に持ち
リュックも背負い
自分の部屋を出た。