「十環、ちょっといいか」


 仲間とたわいもない話をしていると
 総長が俺に声をかけてきた。


 いつもと様子が違う総長。


 笑顔もなければ
 瞳に輝きすらない。


 総長の後ろをついて歩き
 誰もいない倉庫の奥に来た。


 この重い空気を取り払いたくて
 俺は明るい口調で言った。


「総長、今日もお手合わせお願いします。

 俺、昨日言われたこと
 練習してきました。

 攻撃をかわす時の動きを
 もっとコンパクト……」



「十環さ……

 TODOMEKIやめろよ」


「……え?」



 俺が……

 TODOMEKIを……

 辞める?



 それって……


 出て行けってこと?



 俺が全く予想をしてなかった言葉に
 凍り付く俺の心。


 総長の決めたことは絶対。


 それがTODOMEKIのルール。


 そんなこと、わかっている。


 恐ろしいほど
 わかっているはずなのに……

 

「総長は
 そんなに俺のこと、邪魔ですか?」


「は?」


「俺を追放したいほど
 俺のこと嫌いですか?」


「十環……

 そうい……」


「わかりました。
 もう俺、ここには来ませんから」


 俺はそう吐き捨てると
 唯一の居場所だと思っていた
 大事な場所を飛び出した。