「この写真って、TODOMEKIの仲間?」


「そう。 
 真ん中にいるのが総長」


 一颯は写真を見つめながら
 悲しそうな表情を見せた。


「十環にとって
 大事な場所ってのがよくわかる写真だな。

 この写真の十環
 すっげー良い顔で笑ってるじゃん。

 俺さ、言おうと思ったんだよね。

 TODOMEKI辞めて
 俺と明虹学園に入ろうって。

 十環となら
 絶対に学園生活楽しいと思うし
 お前のことを心から笑わせる自信も
 あったけど……

 この写真の十環見ちゃったら
 そんな自信、一瞬で消え去ったわ。

 俺じゃ多分
 十環のこと、ここまで笑わせられない」


 一颯の悲しげな瞳に俺が映っていた。


 あんなに学校が嫌いだったのに。

 絶対に高校なんて行かないって
 思っていたのに。


 いつの間にか
 『一颯と一緒に高校に行ったら
 たのしいだろうな』って
 思っている自分がいた。


 同じ制服を着て
 冗談を言い合って。

 

 でも
 俺は裏切ることなんてできない。


 総長のことも。 

 TODOMEKIの仲間のことも。


 
「十環、
 なんか巻き込んじゃって悪かったな。

 俺のことは、気にしなくていいからな。

 俺ならさ
 公立高校の受験なんて
 楽勝で合格できるしさ。

 十環は自分が思う道を、行けばいいよ」


「……ありがとう。
 じゃあ、そろそろ俺、帰るね」


「駅まで送ろうか?」


「大丈夫。
 来た道くらい、覚えているから」


 一颯は
 玄関まで俺を送ってくれた。


 俺が玄関ドアを開けた時
 一颯がボソリと言った。


「十環さ……

 今日俺といて……

 楽しかった?」


「……うん」


「それなら、良かった」


 晴れ渡った空のような
 さわやかな笑顔を見せた一颯。


 一颯のその笑顔を
 また見たいと思うのに。


 連絡先も交換しないまま
 俺は
 一颯の家の玄関ドアをばたりと閉めた。