「六花さ。

 それくらい着てやればいいじゃん」


「嫌だもん!!

 お母さんは似合っていたと思おうよ。

 でも、私なんかが着ても
 絶対に似合わないもん!!」


「似合うよ!
 りっちゃんなら!

 ね、雪ちゃんのワンピース
 1回だけでいいから着てよ。

 りっちゃんがこのドレスを着て
 写真をパシャっと撮らせてくれたら
 すぐに脱いでくれていいからさ」


「お父さん!! 

 着るのもムリだし
 写真なんて絶対にイヤ!!」


「りっちゃん……」


「親父もさ
 こんだけ六花が嫌がってんだから
 諦めてやれよ」


「……嫌だし」


 一颯のお父さんって……

 子供みたいだな。


 一颯とお父さんの立場が
 入れ替わっているって思ったらおかしくて
 「フフフ」と鼻で笑ってしまった。


「親父も六花も
 俺の友達がいること
 気づいてないだろ?」


 一颯の言葉を聞いて
 六花ちゃんも一颯のお父さんも
 同時に俺を見つめてきた。


 六花ちゃんはすぐに
 顔を赤らめてうつむきだした。


 そして

 一颯のお父さんはというと……


 スクっと立ち上がり
 スーツのジャケットについたホコリを
 手で払うと
 紳士モードで俺の前にやってきた。


「初めまして。
 一颯の父です」


「あ……桃瀬……十環です」


 このお父さん

 さっきまでと態度違いすぎ。


 六花ちゃんの足に
 しがみついていた時は
 酔っぱらいの
 ダメダメ親父っぽかったのに。


 今
 俺の目の前にいる一颯のお父さんは
 背筋がピンと伸び
 さわやかな笑顔を振りまく
 イケメンダンディなパパって感じ。

 でも
 デキる男を装い続けるのはムリらしい。


 一颯の言葉に
 またダメダメ親父が顔を出した。