「今さ
大量の洗濯物が入ったカゴを抱えてたけど。
継母にこき使われていそうな感じとか
あのオドオドした感じとか。
シンデレラっぽいよね?
ああいう子は
将来カッコいい王子様が現れて
ハッピーエンドだと俺は思うな」
「俺が童話に出てくる
継母だって言いたいわけ?」
「う~ん。どうだろう……
六花ちゃんにとっての
継母になるのか、王子様になるのかは
これからの一颯次第でしょ?」
「なんだよ、それ!」
「今の一颯は
間違いなく継母だけどね」
いじける一颯がなんかかわいくて
ついイジメたくなってしまう。
俺は自然と「アハハ」って
声に出して笑っていた。
一颯の前で笑ったの……
初めてかも……
「今、十環、笑ったよな?
心から、笑ったよな?」
「拗ねる一颯がおかしくて
笑ったけど……
まだ一颯に……
心許したわけじゃないから……」
……そう。
まだ一颯を
ちゃんと信用したわけじゃない。
今まで俺の周りにいた友達だって
はじめは優しかった。
一緒にいて楽しいし
良い奴だって思った。
でも俺が心を開くと
だんだん俺から離れていく。
そして俺のことを
『かわいそうな奴』ってバカにするんだ。
一颯だって……
まだ……
信用できない……
「ま、こんな早くに
十環が俺に心を開くなんて思ってねえし。
2階の俺の部屋に行くぞ。
そのあと、行くところもあるしな」
一颯はこの後
俺をどこに連れて行く気なんだろう。