「俺の3年間……返してください」


「え?」


「なめてます? 俺たち受験生のこと。
 この受験に、人生をかけているんですよ」



 言っている言葉は乱暴だけど
 ここまではまだ
 気持ちを抑えることができていた。


「なめているなんて、そんな……」


 呑気に微笑む学園長を見た瞬間
 一気に脳みそが煮えたぎり
 怒りを爆発させていた。


「あんたさ、高校の学園長なんだろ?

 どんな思いで、
 俺たち受験生が努力してきたかくらい
 わかりますよね?

 俺なんて、この学園に入るために
 中学の3年間を勉強とファッションに
 捧げてきたんだよ! 

 努力すれば
 きっと入れるって信じてたのに
 本当にがっかりだぜ!!」


 あれだけ、面接の練習もしたのに


 敬語をきちんと使って
 面接官の目を見て微笑むみ
 落ち着いて自分の思いを届ける練習を。

 毎晩、毎晩。


 それなのに
 抑えていた怒りの感情があふれ出したとたん
 ブレーキが利かなくなり、
 廊下にも聞こえるくらいの大声を
 張り上げていた



 やってしまった……


 今ので
 間違いなく不合格だ


 って
 そんなの関係なかったかもな。


 最初に言われたんだから。

 俺を入学させないって。


 
「もう……いいです……」


 俺はぼそりとつぶやくと
 椅子から立ち上がり
 ドアに向かって歩き出した。