「十環!! 

 はぁはぁ……

 本当にごめん!
 遅くなった! マジでごめん」


 十環は無言で
 俺と反対の方を向いたまま。


「6時間目、サボって帰ろうとしたらさ
 先生に見つかっちゃってさ。

 待たせちゃって本当にごめんな。

 俺なんか待たずに
 帰ってくれて良かったのに」


「別に……

 一颯に会いたかったとかじゃないから。

 一颯の宝物を返したら
 すぐに帰るつもりだったし」


 十環が俺のことを
 『一颯』って名前で呼んでくれた。


 それに
 敬語じゃなくなっている。


 俺は嬉しすぎて
 笑みがこぼれてしまった。


「何?」


「なんかさ
 十環が俺を友達として認めてくれた感じで
 なんか嬉しくってさ」


「は? 

 一颯のこと
 友達と認めたなんて一言も言ってないよ?

 この箱を返したら
 もう一颯とは一生会わないつもりで
 俺はここに来たんだから」


 そう言って十環は
 俺の宝物の箱を差し出した。