日が沈み
街頭だけが真っ暗闇を照らす道を
自転車で向かったのは
俺が唯一、心を許せる場所。
俺のことを信頼して
『仲間』と認めてくれた
みんながいる場所。
自転車を止め、倉庫のドアの前に来ると
俺は今日初めての笑顔を作って
ドアを開けた。
「こんばんは」
「お~、十環。
お前
今日はいつもより来るのが遅くねえ?」
「あ……ちょっと……
予期せぬことが起こって……」
「あまりの寒さに
自転車こぐの諦めて
家のコタツで
ぬくぬくやってんのかと思った」
「そうそう。
オレンジ色の分厚いはんてん着てさ
ミカンでも食べてんのかと思ったぜ」
「俺が、ここに来ないなんて
あるわけないじゃないですか。
嵐が来ても自転車こいで来ますよ。俺は」
「嵐ん時くらい、せめて歩いて来いよ」
「十環、台風なめすぎだろ?」
「アハハ」
みんなの笑い声が
倉庫中に響き渡る。
その中に
俺の笑い声もこだましていた。