え?


 別れる?


 全く予想もしていなかった言葉すぎて
 聞き間違えとさえ思ってしまう。


 でも……


 ずっと地面を見つめたままの
 結愛さんを見て
 聞き間違えなんかじゃないって
 現実を突きつけられた。


「結愛さん……

 本気?」



「うん」


「え? どうして?

 俺、何かしちゃった?

 結愛さんに嫌われること
 何かしちゃった?」


「十環くんのせいじゃないの。
 私のせいなの」


「それって、どういうこと?」


 俺と別れたいって思う理由を
 知りたいのに。


 結愛さんは今にも泣きだしそうな表情で
 必死に唇をかみしめている。


「結愛さん、理由言ってよ。

 俺、突然『別れて』なんて言われても
 納得できないよ」


「……知られちゃったから」


「え?」


「十環くんが中学の時に
 暴走族に入っていたこと……

 私のお父さんに知られちゃったから」


 荒れていた時の俺の過去が
 結愛さんのお父さんにバレたってこと?


「でも結愛さん
 俺がTODOMEKIにいた話をしたときに
 言ってくれたじゃん。

 そんな過去、気にならないって。

 この前俺が
 TODOMEKIに顔を出した話をした時も
 笑って聞いてたよね?」


「だから、私は良いと思うの。

 十環くんが今でもTODOMEKIに行きたいなら
 行けばいいって。

 でも…… 

 お父さんにはわかってもらえなくて……

 今すぐ十環くんと
 別れなさいって……」


「結愛さんは
 お父さんに言われた通り
 俺と別れたいわけ?」


「別れたくないよ…… 
 別れたく……ない。

 だって
 今でも十環くんのこと、大好きだもん」


「それなら親の意見なんて
 関係ないじゃん」


「関係ないわけないよ。

 だって私…… 
 ファッションブランド『シルキー』の
 一人娘だから」


「え?」