帰りの時間になり
 珍しく結愛さんが
 俺の教室まで迎えに来てくれた。


「十環くん、一緒に帰ろ」


 付き合って8か月も経つのに
 結愛さんの笑顔は
 やっぱりかわいくて。


 俺に微笑んでくれただけで
 幸せすぎて
 俺まで微笑み返してしまう。


 俺は急いでカバンの中に荷物を詰めこみ
 結愛さんと肩を並べて
 バス停がある磐森駅に向かった。


「ねえ十環くん、ブランコに乗らない?」


 公園の前で立ち止まった結愛さん。


 俺の裾を控えめにつかんで
 上目づかいで見つめられ、
 俺のハートがキュンって飛び跳ねた。


 嬉しいかも。


 結愛さんと並んでブランコに乗るのって
 ちょっと憧れていたから。



 お互いブランコに座り
 俺は地面から足を離してこいでみた。


 子供の頃以来のブランコ。


 隣に結愛さんがいてくれると思うと
 俺の心も嬉しさマックスで揺れていた。


 それなのに……


 結愛さんは地面を見つめたまま
 ブランコをこぎだそうともしない。


「結愛さん?」


「……」


 え? 

 急にどうしたんだろう?


 知らぬ間に結愛さんのこと
 怒らせちゃった?


 唇を固く結んで
 地面を見つめる結愛さん。


 長い沈黙の後
 ようやく大好きな声が俺の耳に届いた。


「十環くん……

 別れてください」