次の朝、学校に行くと
 門のところにキャラメル色の髪が
 風になびいていた。


「十環くん、おはよ」


 昨日のことは何もなかったかのように
 いつも通り俺に最高の笑顔を
 向けてくれる結愛さん。


「十環くん、昨日はごめんね。

 東京に行きたいって言ったことは
 忘れてもらえる?」


「え?」


「あれから私も、考えたんだ。

 やっぱり嫌だもん。
 十環くんと離れ離れになるのは」


 そう言って
 優しく微笑んだ結愛さん。



 良かったぁ。


 これからもずっと一緒にいられる。

 大好きな結愛さんと。


 俺は素直に安堵した。


 でもこの時
 俺は気づいていなかった。
 

 結愛さんの瞳が
 悲しく光っていたことに。