「今日は入学式で
 3年の結愛さんには会えないと
 思っていましたけど。

 もし会えたらって思って
 カバンに忍ばせていました。

 俺と……

 付き合ってください」


「…………はい」



 信じられない……


 学園のみんなから好かれている結愛さんが
 俺なんかを選んでくれるなんて。


 結愛さんは微笑んでくれているけど
 涙は止まる気配がない。


「結愛さんのこと……

 抱きしめても……いいですか?」



 俺の自信なさげな言葉に
 コクリとうなずいてくれた。


 俺は結愛さんと同じ段まで階段を上がり
 結愛さんの前に来た。


 結愛さんが
 上目使いで俺をまっすぐ見つめている。



 やばい。



 この
 瞳がうるうるで弱った感じの結愛さん。

 かわいくてしかたがない。


 俺の心臓のバクバクが
 今日一番の速さで動いている。


 結愛さんの瞳に吸い込まれそう。


 俺、こんな気持ちになったの
 生まれて初めて。


 結愛さんに触れたいって思った時にはもう
 イチゴのように真っ赤に染まった
 結愛さんの頬に
 手のひらを伸ばしていた。


 そして


 潤んだ瞳に引き寄せられるかのように
 俺は結愛さんにキスをした。