「でもね
 今日まで心配だったの」


「何をですか?」


「十環くんが…… 

 この学園に本当に来てくれるかなって……」



 なんで?


 なんで結愛さんは、
 俺がこの学園に来るか心配だったんだろう。


 目をパチパチしている俺を見て
 顔を赤らめうつむく結愛さん。


「だって……

 来てくれなかったら……

 伝えられないから……」



 そして俺が来るまで何か書いていたノートを
 俺の目の前に広げた。



 え?



 ノートの開いたページに
 ぎっしりと書かれた4文字。


『会いたい』



 
「これって?」


「変だよね? 

 十環くんとは
 ここで1度会っただけなのにね。

 でもその時から、ずっと思ってて……

 十環くんに……早く会いたいなって……」



 結愛さんの口から届いた言葉が
 予想外すぎて
 俺は返事もできないくらい
 固まってしまった。


「そんなこと言われても
 十環くんも困っちゃうよね……

 でも……

 さっきも女の子たちに
 囲まれていたでしょ?

 他の子に取られちゃう前に……

 自分の気持ちを伝えたくて……」



 うつむきながら
 モジモジしている結愛さん。


 でも、ゆっくりと顔を上げ
 潤んだ瞳で俺を見つめた。


「十環くん……

 好き……です」