ど……
どうしよう……
手すりにしがみついている
情けない姿を
結愛さんに見られちゃったし……
その時
「十環くん、大丈夫?」
俺を見つめたままの結愛さんが
太陽の光で輝く水辺のように
キラキラな瞳で微笑んだ。
その結愛さんの笑顔が可愛すぎて
また俺の心臓が
バクンバクンと高鳴る。
結愛さんはゆっくりと階段を下り
俺の前まで来た。
「私、ちゃんと十環くんのこと
見つけられたでしょ?」
「え?」
「すごく自信あったんだよ。
十環くんの髪色が変わっても
見つけられるって」
ぱっちりした瞳がなくなるほど
めいっぱい微笑んでくれている結愛さん。
俺との約束を覚えていてくれて
俺をみつけてくれたことが
嬉しくてしかたがない。
でも……
心をかき乱されるほど
俺が好きになってしまったこの人は
高嶺の花。
この学園で数えきれない男子が、
結愛さんを狙っているに違いない。
俺なんかが手に入れられる
相手ではない。
そう思うと
息ができないほど苦しくなる。
どうしても笑顔を作れない俺は
ぼそりとつぶやいた。