入学式後のHRが終わった。
「これで良し」
一颯が俺の髪をセットし終えたとき
俺たちの周りを
女子たちが囲んで来た。
「一颯くん、十環くん
一緒に帰ろ」
「入学記念に
プリクラ撮りに行かない?」
「私も行きたい!!」
今すぐにでも
眠り姫と出会った階段に
掛けていきたいのに。
女子たちの圧がすごくて
どうしていいかわからない。
その時
一颯が助け船を出してくれた。
「みんな、ごめんな。
俺たちさ
学園長に呼び出されていてさ」
「え? なんで?」
「俺と十環の制服の着こなしがさ
気に入らないんだって。
今から多分、お説教だし」
一颯って、すごい!
女子たちを追い払うために、
速攻でこんなウソを思いつくなんて。
しかも、悲しそうな表情までしてさ。
「一颯くんたちの制服姿
すごくカッコいいのにね」
「学園長って
案外ファッションセンス無いのかもね」
俺たちの嘘のせいで
酷いことを言われている学園長に
心の中でごめんと謝って
俺と一颯は
女子軍団から逃げることに成功した。
「一颯、ありがとう」
「おう。
頑張って来いよ!
って、まあ
十環なら問題ないか」
『そんなことない。
結愛さんを射止める自信、全くないのに』
そう思ったけど
一颯が俺に向ける笑顔が優しくて
俺はコクリとうなずいて
廊下を走り出した。