「十環……なんだよ?」
一颯が『なんだよ?』って言うのは
もっともだ。
でも、結愛さんのことを
素直に話す勇気が
なかなか出てこない。
「一颯ってすごいね。
だってさ
女子に興味ないって感じなのに
話しかけられたら笑顔で返してさ」
「俺だって
できることなら女子なんて
みんなムシしたい。
六花以外
話したいと思う女子なんていないしさ」
「でもさっき
『これからよろしく』って
王子スマイルを振りまいてたじゃん」
「あれは
この学園にいるためだからな。
俺がこの学園に入学する条件の一つが
女子ともめ事を起こさないことなの。
女子ともめたら即効で退学にするって
学園長に言われてんの」
「一颯は、そんな爆弾を抱えて
高校生活を送るわけだね」
「ま、
すっげー入りたかった高校だから
女子と仲良くする努力はするけど。
いつか
ボロが出そうな気がするけどな。
で、そんな話をしたくて
この部屋に連れ込んだわけじゃないよな?
十環くんは」
そうだよね。
ばれているよね。
俺は瞳をぎゅってつぶって
一颯に向かって口を開いた。