俺が落としたものではない。


 わざわざ結愛さんが
 俺のところに来て
 みんなには内緒で
 キャラメルをくれたってこと?


 手のひらに
 ちょこんと乗っているキャラメルを
 ひっくり返してみた。


 『放課後 この前の階段に来て』


 結愛さんからのメッセージに
 ピストンのように勢いよく
 飛び跳ねる心臓。


 どうしよう。


 すっごく嬉しい。


 嬉しいはずなのに…… 



 胸が締め付けられるように
 苦しくなる。


 階段に会いに行って
 俺のハートが耐えられないような
 現実を突きつけられたらどうしよう。


 『彼氏がいる』とか

 『一颯の方が、タイプだった』とか



 あ~ ダメだ!


 悪いほうに悪いほうに
 考えてしまう。


 でも……


 結愛さんに会いたくてしかたがない。


 その後
 教室に移動中の波から外れて
 一颯を誰もいない2年の教室に連れ込んだ。