「赤城くん、すごいね」


「新入生代表スピーチ
 カッコよかったよ」


 女子たちが黄色い声を発した瞬間
 悪魔モードから
 王子様スマイルに切り替えた一颯。


「俺、1年A組だから。

 これからよろしくな」


「赤城くん、声もカッコいい」


「一颯くんって、呼んでもいい?」


「私も」

「ずるい、私も一颯くんって呼ぶ!」


 さすが一颯。


 入学初日から
 女子のハートをつかんじゃうなんてさ。


 俺なんて
 期待に胸膨らませていた恋が
 玉砕しかかっているのに。


「一颯くんのお友達も、イケメンだね」


「名前教えて」


 なぜか一颯だけじゃなく
 俺の周りにも
 頬を赤らめた女の子たちが。


「桃瀬…… 十環だけど……」


 一颯みたいに
 器用に笑顔なんて作れないし。


 視線を外しながら
 ぼそりと名前を言った。


「じゃあ
 十環くんって呼ばせてもらおうっと」


「十環くん
 桃色のベスト似合ってるね」


「私も思った。
 女子より綺麗な顔してるし」


「……ありがとう」

 女子に囲まれることに免疫がなくて
 つい、オドオドしてしまう。


 その時
 俺と同じキャラメル色のフワフワした髪を
 瞳がはっきりととらえた。


 ゆ…… 結愛さん……