バス停から
明虹学園に向かって歩いていると
一颯が口を開いた。
「十環ってさ、結局食べたの?」
「何を?」
「結愛さんにもらった、キャラメル」
「食べた…… けど……」
俺の言葉を聞いて
キラキラーンと
一颯の表情が輝いた。
まるで
同類を見つけて喜んでいるような
目の輝き。
「で、どうだった?
十環って甘いものが嫌いじゃん。
おいしかったの?
まずかったの?」
「……
すっごく……
おいしかったけど……」
「やっぱりな!!」
なぜか一颯は嬉しそうに
両手ガッツポーズで
腕を上下にぶんぶん振っている。
「一颯……
何?」
「だってさ
十環は甘いものが嫌いだろ?
それなのにさ
好きな子からもらったキャラメルは
おいしく感じちゃう気持ち
俺にもわかるからさ」
「へ?」
「俺さ甘いものが大好きなんだけどさ
子供の時についた嘘のせいで
甘いものが大嫌いって
六花に勘違いされてんの。
ま、勘違いさせたのは
俺なんだけどね。
俺、苦いものなんて大嫌いなのにさ
『抹茶好き』って思われててさ。
クリスマスケーキは
毎回ニガニガの抹茶ケーキ。
親父や六花たちは
イチゴのショートケーキとか食べてるから
俺もそっちが良いって
思っちゃうんだけどさ。
六花が俺のために
抹茶ケーキを焼いてるのを見たら
すっげー嬉しくて。
苦いんだけど
おいしく感じるんだよね。
でもさ
できれば抹茶ケーキじゃなくて
六花が作る極甘ケーキを
食べたいんだけどさ」
一颯って……
本当に六花ちゃんのことが
大好きなんだな。
この愛の深さ……
礼音さんと同類な気がする……