◇◇◇◇


「十環!! 

 約束の時間過ぎてんじゃん!!」


 今日は明虹学園の入学式。


 バス停でバスを降りると
 目を吊り上げた一颯が
 目の前に仁王立ちしていた。


「ごめんね。

 昨日の夜、なかなか寝付けなくてさ。

 寝過ごしちゃって。」


「どうせ
 結愛さんのことでも考えてたんだろ?

 会えるかな?
 髪の色を変えた俺に
 気付いてくれるかな?って」


「は? 

 そんなことないし……」


 ごまかしてはみたものの
 一颯にはお見通しらしい。


 ニヤリと口角を上げて
 不気味に微笑んでいる。


「でもさ、十環。

 今日は入学式だから
 3年はいないと思うけど」


「だから、わかってるんだって。

 今日は結愛さんに
 会えないことくらい」



 入学式だから
 結愛さんは学校に来ないことは
 わかっているのに。


 なぜかドキドキが止まらない。


 昨日の夜も

『もし結愛さんに会ったら
 なんて声をかけよう』とか

『俺のこと、忘れられていたらどうしよう』
 とか

 いろんなことを想像して
 寝られなくなってしまった。