「桃瀬くん……だよね?」


「は? 誰ですか?」


 濁り切った瞳で
 俺をにらみつける桃瀬。


 人を拒絶するするどい視線に
 俺の背中がフッと
 後ろに倒れそうになる。


 こいつ綺麗な顔をしているのに
 関わったら危険なタイプの
 人間じゃないのか?


 そんな弱気になった俺の心に
 剣をもった勇者が耳の奥で囁いた。


 一颯! ダメだろ! 


 ここで
 ひるむわけにはいかないだろ!!


 お前の人生がかかっているんだからな!!



 その通りだ。

 勇者の言う通り。


 話だけでも聞いてもらいたくて
 何とか笑顔を作ってみた。