「学園長……
俺を、この学園に入学させてください」
「もちろんよ。
それが私の、8年越しの夢だもの」
学園長は大きな瞳がなくなるほど
とびきりな笑顔を見せてくれた。
それなのに…………
いきなり鋭い目つき変わった。
オシャレのプロの目つきに。
「一ついいかしら?
ないわ。その水色の髪色はないわ」
「え?」
「だって十環くんの柔らかい雰囲気を
殺してしまっているでしょ?
ちょっと待っていて。
今
ファッション誌を持ってくるから。
今から、十環くんに似合う髪色を
私が選んであげる」
「それは……結構です」
「え?
十環くん?
その水色の髪で
この学園に入学するつもり?
いくら十環くんだからって
似合っていない髪色で校内を歩いていたら
私、捕まえてお説教しちゃうわよ」
「その心配はいりません。
一颯が
俺に似合う髪色を見つけてくれたので」
俺はポケットから
キャラメルを取り出した。
そして包みを開け、学園長に見せた。
「そのキャラメル色に
染めるってことかしら?」
「はい。
一颯が選んでくれたので」
「さすが、一颯君ね。
十環くんの似合う色まで
見極められるなんて。
じゃあこれは、私からの入学祝いよ」
手渡された紙袋に入っていたのは
新品の学生服。
それに、桃色のベストだった。
「制服のサイズは
この前着たサイズでぴったりだったでしょ?
ベストの色は
一颯くんが選んだ桃色が一番似合うと
私も思うわ」
「いただいてしまって
いいんですか?」
「良いに決まっているじゃない!
私がこの学園を続けられたのは
十環くんのおかげだもの。
これくらいのお礼、させてね」
穏やかに微笑む学園長に向かって
「ありがとうございます」と
丁寧にお礼をして、
俺は、学園長室を後にした。