「その頃ね
この学園ができて3年くらいで。
世間からは結構バッシングされていてね。
私、ちょっと変わっているでしょ?
勉強のことよりも
オシャレやファッションのことで
学生を捕まえてガミガミ言っちゃうから。
親御さんたちが怒って
乗り込んで来たこともあってね。
自分の学園方針に
自信が無くなっちゃって。
精神的にも追い詰められている時に
十環くんに会ったの。
桃瀬さんの写真館で。
十環くんに
学園のことを愚痴っちゃって。
小1の子に話しても
どうせわかってもらえないって思ったけど。
その時に十環くんに言われた
言葉のおかげで
自分に自信がついたのよ」
「俺、なんて言ったんですか?」
「『僕が高校生になったら、
オシャレな高校に入りたいな』って
キラキラした笑顔で
十環くんが言ってくれたから思えたの。
『十環くんが高校生になる時に
この学園に入りたいって
思ってもらえるような高校にしよう』って。
でも、中3になった十環くんを
こっそり見に行った時は
ビックリしちゃったわ。
髪の毛は水色だし
小1の頃見せてくれた
あのキラキラした笑顔が
どこかに行っちゃって。
全く笑わない子になっていて。
だからね
何としてでもこの学園に入れて
十環くんの笑顔を
私が取り戻してあげるって思ってしまったの。
ま、その必要は
もうなくなったみたいだけどね」
俺が小1の時に言った言葉が
この学園長の
心の支えになっていたなんて……
全く想像していなかった。
でも、学園長の話を聞いて
心がじんわり温かくなった気がする。
だって、ここにも
俺のことを心配してくれていた人が
いたってわかったから。