自分の部屋に戻り
 家出用に用意した荷物を
 引き出しに戻していると。


 『ちょっといいかな?』と
 父さんが俺の部屋に入ってきた。


「十環くんに
 隠していたことがあってね」


「え?

 もしかして……
 俺を産んだ母さんのこと?」


「ごめん……

 美佐子が今どこにいるのかは
 まだわからないんだ。

 ずっと探しているんだけどね。

 僕が隠していたことは
 十環くんが毎日通っているTODOMEKIの
 龍牙くんのことだよ」


「総長?」


 父さんの口から
 総長の名前が出たことに驚いた。


 だって俺は家族の前で
 『TODOMEKI』も『龍牙さんの名前』も
 口にしたことがなかったから。


「総長が
 どうかしたんですか?」


「十環くんが中1だったから
 もう2年半以上も前になるかな。

 龍牙くんが最初にこの家に来たのは」


 総長が……

 俺の家に?