他校生

「先生、質問いいですか?」


塾のカウンターに乗り出して、手の空いてそうな先生に声を掛けた。



「どうしたの?どの問題?」


「あ、違うんです。進路の話で……」


「良い心がけね」

先生が眼鏡越しににっこり笑った。



まぁ、結果は努力次第。

つまり、今のままじゃ厳しいって事だ。


文系で行こうと思ってる。
と、なると…ウィークポイントは……


バッグの中でスマホが震えたのに気付いて、画面をタップした。




アイコンは工藤くん。

メッセージを確認すると


『一駅前で降りて』

一駅前?

よく分からないけど、


『了解』のスタンプを送った。



指示通り、一駅前で降りると

改札の前に……工藤くんの姿。



昨日会ったばかりで
付き合ったばかりで

嬉しいけど、恥ずかしい。



チラっと見ると直ぐに俯いてしまった。

今日も、カッコいい。



「あれ、嫌だった?」

私の顔を覗き込んで、そう言った彼に


ぶんぶんと首を横に振る。



「えーっと、乗って」

言われるまま、彼の自転車の後ろに乗った。


「朱里ちゃんの家の最寄り駅、石橋に聞いた」


「うん」


「遅くなるといけないからさ、でも……会いたくて。一駅だけ……送らせて」


「うん」


少しでも、一緒にいたいと思ってくれた事が凄い嬉しい。

会いに来てくれた事も


「あ、でも部活終わりなのに、しんどいでしょ?私…漕ごうか?」


「俺、70キロ近くあるけど?」

「嘘!?」

「本当~。ウェイトしてるもん」

「………」


ウェイトトレーニング……

じゃあ、細マッチョなのかな……腹筋とか?



「触ってくれていーけど?」

「え!?いいの!?」

「………いや、からかったつもり……」



……いや、そうだよね。

触りたいじゃない、やっぱり



「朱里ちゃんの、えっち」

「は!?え!?ゴ、ゴホゴホ」

噎せた。

恥ずかしい。



「また、もうちょっとしたらね。ほら、段階ってもんがあるだろ?」


顔が見えないのを良いことに、からかってくる
工藤くんの背中をグーパンチでやり返した。




そして

“会いたかった”って割には……


「自転車漕ぐの早くない!?」

一緒にいる時間が……


「あ、だって塾なのに遅くなったらダメだろ?電車と変わんないくらい、頑張ってる」


「あはは!時速ハンパない!脚力!!」


キッ

急にブレーキを掛けられて、工藤くんの背中で顔を打った。




「痛っ!どうしたの?」


「“ちゃんと”付き合うからな」


工藤くんはそう言うと、また

脚力生かして漕ぎ始めた。



とても……優しい、時間だった。


また少し…私は工藤くんを好きになった。