意識してるのはいつだって私だけ。

学校ですれ違うときも、マンションですれ違うときも。

遥琉は全然私のこと見向きもしてなくて、遥琉には私のことだけ透明に見えてるんじゃないかと思うほど。

同じ空間にいても、明らかに見えない線があるみたいに別世界にいる人になって。

私の、我慢していた気持ちとか、秘めていた思いとか、こいつにとってはどうでもいいことなんだ。

だから簡単に、触れてくる。

『キスしよう』なんて気持ちがないから、冗談で言えちゃう。

大嫌い。

変わってしまった有馬 遥琉が大嫌いだ。

「バカ!しないから!アホ!」

肩に触れてた彼の手をパンッと振り払って、その場から立ち上がる。

ある程度距離を取らないと、変なふうにからかわれてしまうから。