「……遥琉に関係なくない、そんなこと」
今にも消えちゃいそうな声で呟く。
聞こえないかもと思ったのに、やつはちゃんと聞き取った。
「……あるよ、幼なじみだから」
便利な言葉だね。
私たちのそれに、中身なんてもうなにもないのに。
都合のいい言葉だ。
『幼なじみ』
そんなこともまるでなかったことのようにしたのは遥琉の方なのに。
それなら、私だって遥琉の『幼なじみだから』を理由に、根掘り葉掘り聞いてもいいのかな。
「……遥琉は」
「なに?」
「……遥琉が教えたら教えるよ。遥琉はいつなの」
バカみたい。
一番聞きたくないって思ってたはずなのに。
本能は知りたくて仕方がないんだ。
聞いたってどうせ、良いことなんてないのに。
「中1」
ほら。
誰となのか予想がついて、胸が締め付けられて。
相手の顔なんて、いやでも思い出せちゃう。
『……私、遥琉くんのこと好きなんだよね』
当時同じグループにいた女の子。
私と仲良くなろうとしてくる人は、いつだって遥琉目当てだった。